仕事や生活で、不注意やミスが多い

不注意やミスが多い。約束や締め切りを忘れてしまう。集中して話が聞けない。やらなければいけないことを先延ばししてしまう。気が散ってしまい集中できない。逆に、好きなことに集中しすぎてしまう。色々と頭に考えが浮かんで、パニックになる。色々なことが気になって、気が散りやすい。課題を最後までやれない。片付けられない。時間や金銭の管理が苦手。よくしゃべる。そわそわ落ち着かない。順番が待てない。思いつきをすぐ言ったり、行動に移す。余計なことを言ってしまい、人間関係が作れない、等々のいろいろな症状があります。不注意、多動性、衝動性の3つの分類で説明でき、その人それぞれで、3つの分類の症状の現れ方がちがいますが、「大人のADHD」で、最も目立つのは、「不注意」です。
日常生活はもちろんのこと、仕事などの社会生活でも支障がでますから、仕事でミスをしたり、上司に何度も怒られたり、場合によっては、転職を繰り返したりします。家庭を持つ人は、家庭の中がうまく行かなくなる場合もあります。

多動・衝動は、小さい頃や思春期には目立っても、大人になるうちに、自分である程度コントロール出来るようになっている人も多いです。しかし実際には、かなり頑張って、多動・衝動を抑えているので、それも苦労されているかたが多いです。

発達障害

発達障害は、ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠如・多動性障害)、LD(学習障害)の3つが含まれます(これらの3つは、一部重なり合っている場合も少なくありません)。誤解されやすいこととして、発達障害は、「原則的には(※)」、生まれつきの「脳の問題」であり、心の問題や、育てられかたの問題では無いと言うことが重要です。
(※)原則的には、と言う意味は、小さい頃から、発達障害のいろいろな症状=特徴に対して、親や学校の先生から理解されず、ストレスを継続的に受けていると、発達障害という本来の「脳の問題」が、さらに悪化していき、うつ状態などの精神疾患や、自信や自尊心の低下にまで、つながることがあるという意味です。

生まれつき、脳の特徴にアンバランスがあり、出来ることと、出来ないことの差が目立つために、発達障害と呼ばず「発達凸凹(でこぼこ)」と呼ぶ専門家もいます。「障害」としてでは無く、その人の持つ特性や個性と見なす発想に転換しようという考え方です。

その証拠に、卓越した能力を発揮できるひともいます。ADHDではないかと推測されている人たちの中に、エジソン、アインシュタイン、ピカソ、織田信長、等々がいます。そこまで天才的で有名な人では無くても、創造力や芸術的センスの必要な仕事につき、結果を出している人は少なくありません。

二次障害

軽度の発達障害を持つ人たちは、幼い頃に障害とは気付かれず、必要なサポートが受けられずに、人知れず困っていることも多いのです。また、真面目にやっていない、努力が足りない、などの誤解を受けやすく、思い悩んで、うつ病や適応障害になったり、他の精神疾患になったりします。これを二次障害と言います。また、幼少期から、このように、ストレスを受け続けたり、周囲からの誤解を受けてきたので、自信や自尊心の低下が見られ、自信が無く、慢性的な孤立感や空虚感に襲われることもあります。

ADHDの症状は薬で大きく改善することが期待できますので、まずは、薬物治療によって症状を改善することが、重要です。
診断や治療の過程で、「疾患の受容」や「自己受容」が問題となってくることがありますが、それについては、フォロー致します。
そして、薬を使ってはいても、成功体験を日々重ねていく中で、次第に、「受容」出来るようになっていくことが多いです。

さらに、発達「障害」では無く、自分の個性として、自分の特性を十分理解した上で、それに合った具体的対応策を身につけることで、生活上の悪循環を断ち切り、その結果、徐々に自信や自尊心を取り戻すことが出来るようになっていきます。

大人のADHD

仕事が上手く出来ないなど、自分が困っていることを調べているうちに、「大人のADHD」ではないかと思うようになるかたが、とても多くなっています。
小さい頃から大人になるまでに、ご自身でいろいろと工夫され努力しながら生活されてきましたが、それでも、日常生活の中で、社会で仕事をする中で、いろいろと困りごとが多くて、不自由を感じてきました。当院では、「大人のADHD」を持つかたの診断、薬物治療と、簡単な相談・助言を行っています。
正確に診断やアセスメントが出来れば、薬物治療はかなり効果が高いことが、当院での経験でも分かっています。

さらに、長年、ADHDの症状で苦しまれてきたことによる自尊心低下の問題が大きい場合、親子関係の問題が存在する場合(発達障害は、親子関係の問題が生じている場合が少なくありません)、ADHDに伴って起きやすい、何らかの「依存」の問題が見られる場合は、「大人のADHD」を専門とする臨床心理士をご紹介致します(外部でのカウンセリングになるため、自費になります)。

長所や才能

ここまでの文章で、ADHDは障害として捉えるのではなく、個性・特性だと考えるべきだと書いてきましたが、実際には多くのスペースで、症状、つまり短所を述べてきました。ところが、ADHDの短所を裏返せば、長所になります。
要するに、ADHDの特性を、十分に理解することで、短所にならないように、バランス感覚を養えば、長所となっていきます。
ADHDの特性として最も代表的なのは、「過集中」です。短所として捉えれば、「やり過ぎて、他のことが目に入らなくなる」ことになりますが、長所として捉えれば、興味のあることに対して、大変な集中力を発揮することになります。その結果、マニアックな趣味・特技を持つ人も多いです。
ADHDの特徴として、不注意、注意力散漫が挙げられますが、その裏返しとして、好奇心旺盛で、新しいもの好きとも言えます。
また、ひらめきや発想が豊かで、エネルギッシュで行動力があるので、何かを成し遂げる能力を持った人たちもいます。
組織の論理を大切にする「お勤め人」では、苦労されることも多いでしょうが、自由業や、ものを作り出すような仕事に向いているとも言えます。

診断

大人のADHDを診断することは、幼少期にADHDを診断するよりも、はるかに難しいことが分かっています。
これは、ADHDだけではなく、ASD(自閉症スペクトラム障害)もそうです。
また、ADHDとASDは、少なくない割合で両者の特性を持っているかたが居るということも分かってきています(併存と言います)。最近、大人のADHDはブームと言ってもいいくらい、過剰に診断されすぎている可能性があります(過剰診断と言います)。本当はそうではないのに、発達障害のレッテルを貼られてしまう人も出てきました。
一方、診断に慎重になりすぎると(過小診断と言います)、「大人のADHD」は、薬の効果が出やすいのにもかかわらず、ADHDのかたの改善の機会を奪ってしまうことになります。

当院では、過剰診断と過小診断のどちらにもならないように、バランスの取れた診察と診断をしています。

薬物療法

コンサータやストラテラという薬は前頭葉の働きを高め、ADHDのいろいろな症状に対して効果があります。
効果の高い薬ですが、値段が高いことがネックとなります。しかし、自立支援医療という医療費の助成制度を利用すれば、自己負担は、通常の1/3になります。その制度を利用した場合、薬の種類や量にもよりますが、大体1ヶ月で、2500~3000円くらいです。また、うつ病などの二次障害が問題となっている場合には、抗うつ薬などを使い、二次障害の治療も重要です。

カウンセリング

長所、短所があまりにもはっきりしていたり、また、小さい頃から、短所(出来ないこと)だけを周囲の人に色々と注意され続けてきていると、日常生活や社会生活の中で、なかなか大変な人生を送ってきたかたも少なくありません。計画を立てて実行したり、約束を守ったりすることが苦手で、一所懸命やっているつもりでも、うっかりミスが多いため、上司や同僚から問題のある人と見られてしまいます。
家庭の中でも、家事や育児が上手く出来ず、夫婦関係がうまくいかなくなることもあります。

いろいろな依存症になりやすいことも分かっています。うつ病などの精神疾患にもかかりやすく、生きるために必要な自信や自尊心も低下することが多いです。
このように、問題が複雑化してしまっており、薬物治療と精神科医による簡単なアドバイスだけでは解決しない場合は、専門知識を持ったカウンセラーの助言を得れば、日常生活や社会生活が、いろいろな工夫や対応策で乗り越えられ、短所は目立たなくなり、長所を伸ばすことができます。
依存の問題、家族の問題(親子、夫婦)、自信や自尊心の低下の問題が大きい場合は、是非、自分の個性・特性をしっかり理解してくれ、適切なアドバイスをもらえる経験豊富なカウンセラーのカウンセリングを受けることもお勧め致します。

  当院がお勧めしていますのは…
東京セラピールーム」 中村正美 臨床心理士

仕事

ADHDと診断されても悲観的になることはありません。知能の問題とADHDは異なるものですので、ADHDの症状がコントロールできれば、優れた仕事が出来るかたは数多くいます。
苦手なことが、全体の足を引っ張って、本来の能力が発揮できない状態にありますが、薬物療法によって不得意を補うことができると、その結果、もともとの長所が発揮されるようになります。それでも、仕事というのは、ミスが許されず、どんなことにも集中力が持続することが必要で、緊張を強いられるものなので、精神障害者保健福祉手帳を取得して障害者雇用として働くと言う方法も考えられます。
障害者雇用では、給料は高くないですが、その人のもつハンディキャップが考慮されて、仕事をすることができますので、仕事のストレスが軽くなると思われます。