人はなぜ眠る?

人はなぜ眠るのでしょう。それは、「脳の疲れ」を取るためです。

起きているときは、仕事や勉強など、さまざまな活動を行いますから、身体だけではなく脳に疲れがたまります。睡眠によって、その疲れを取るのです。
よく眠れるとスッキリと元気になります。よく眠れないと、朝、身体も気分も重く、すっきりしません。

起きている間、ずっと、人間の脳は、外の世界から情報を受け取っています。外の世界からの情報だけではなく、頭の中でも活動し続けています。
その日あまり良くないことが起きたり、心配事があったりすると、脳は、活動レベルをうまく下げられずに、寝付けなかったり、眠りが浅くなったりします。

脳の疲労回復

睡眠不足の状態では、脳がうまく休養を取れず、疲労回復ができないので、翌日の頭や身体の調子に大きな影響を与えます。細胞学的には、神経細胞は、筋肉細胞と同じくらい、エネルギーや栄養素を使うので、十分休養し、脳細胞に栄養補給をし、回復させる時間が必要です。そのために、睡眠が必要なのです。

睡眠の質

睡眠は、よく時間が問題にされますが、医学的には、睡眠の質が大切です。つまり、眠りの深さが重要です。
休日に、いくら寝ても疲れが取れない、寝足りない経験をしたことはありませんか。
精神的に疲れている時は、どうしても、眠りの質が悪くなり、いくら寝ても疲れが取れないばかりか、長時間布団の中にいると、かえって、身体がだるくなったり、頭がぼーっとしたり、生活のリズムを崩したりします。
その場合の最も簡単な解決法の一つとして、睡眠薬があります。

睡眠不足、つまり、睡眠障害は長く続くと、うつ病など、もっと重い病気に発展していきます。
睡眠は、快適にパワフルに生活していくために、最も大切なことなのです。

睡眠障害(不眠症)のタイプ

一般的に、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒などのタイプに分けられます。

入眠困難
寝付きが悪い、入眠困難のタイプは、2種類に分類されます。
ベッドに入ろうとすると、かえって目がさえてしまうタイプでは、軽い睡眠導入剤を使用すれば、入眠できることが多いようです。
残業のため、夜遅く帰宅して、頭がさえてしまい眠れないタイプでは、睡眠導入剤と、場合によっては、神経の高ぶりを抑える安定剤を併用します。

中途覚醒と早朝覚醒

中途覚醒とは、夜中に何度も目が覚めてしまうことを言います。

大体、3-4回と表現される方が多いようです。1晩で3-4回も目が覚めると言うことは、睡眠のリズムが乱れていたりして、眠りがかなり浅くなっています。眠っている間中、夢を見ていて、眠っているのか、おきているのか分からない状態と言うかたもいます。このような状態では、睡眠の間に行われる脳の休息がほとんどできていません。朝も疲れが取れず、だるく、意欲も出てきません。

早朝覚醒とは、深夜から明け方に目が覚めてしまって、二度寝が全く出来ないか、できても、ウトウトと夢と現実の間にいるような浅い眠りの状態が続くことを言います。

中途覚醒と早朝覚醒はどちらも、睡眠の深さ、睡眠の質に関係する状態で、良質な睡眠が取れていないので、朝起きた時の調子がとにかく悪くなります。
この状態が続けば、心や身体の不調があちこちに出るようになります。
自律神経失調症になったりもします。 さらに悪化すると、うつ病に発展していきます。
逆に言うとうつ病のかたは、ほとんどの場合、中途覚醒や早朝覚醒がみられます。

睡眠薬とは

睡眠薬には、怖いイメージがあるようです。
依存して、やめられなくなってしまうのではないか、たくさん飲むと昏睡状態になって死んでしまうのではないか、と言うものです。

確かに、はるか以前に使われていた睡眠薬はそういうこともありましたが、最近使用される睡眠薬は、そのような心配はありません。
専門医の指示どおりに飲んで頂ければ、怖いことはありません。
必要が無くなれば、依存して薬を使わないと眠れなくなってしまうと言うこともありません。
必要な時には、是非安心してお使いください。

治療方針と使用上の注意

治療方針や注意事項などをまとめてみました。

【治療方針】

1. 最初は、薬物治療によって、不眠症状を抑えます。
通常、1週間ほどでよくなります。
2. 睡眠が取れるようになり症状が落ち着いてきたら、薬以外の方法を考えていきます。

【薬の使い方】

薬の効果は個人差が大きいので、最初はやや弱めに出します。
1週目に受診していただき、薬の調整をします。

【効果】

■睡眠薬をのむと、熟睡でき、睡眠の質が良くなるので、朝目覚めた時の、体調、気分が良くなります。
■睡眠不足が続くと、昼間、集中力低下、仕事の能率低下、情緒不安定、いらいらが出てきますが、睡眠薬の服用によって、徐々に疲れが取れてくると、そのような症状も無くなっていきます。

【睡眠薬の疑問】

■なぜか、睡眠薬は怖い、というイメージを持っていらっしゃる方がいます。しかし、医師とよく相談し、その方に合った、睡眠薬を服用すれば、問題はありません。
■一度飲み始めると、やめられないのではないか、依存して、だんだん量が増えていってしまうのではないか、という心配が最も多いです。そのかたに合った、適切な種類や量の薬が見つかれば、どんどん増えていくことは決してありません。
 また、睡眠薬によって、睡眠のリズムが整い、たまった疲労がとれていけば、または、不眠の原因が取り除かれれば、少しずつ減らしていき、最終的には飲まなくてすむようになります。

【服用時の注意】

■初めて飲むときだけ、少し効果が強く出ることがあります。
 第1回目の服用が、翌日、仕事のときは、少なめにのんで、様子を見たほうが良いかもしれません。
■薬がうまく合っていないと、朝の眠気が残ったりふらついたりする場合があります。最初は少なめに処方していますが、まれに、たいへん薬が効きやすいかたがいらっしゃいます。
 その場合、薬についている線に沿って、二つに割れるようになっていますので、量を調整してください。
■そのほかに、まれに、吐き気、金縛りなどの、副作用が出ることがありますが、薬を調整すれば大丈夫ですので、早めにご相談ください。

【アルコールと睡眠薬】

■風邪薬、頭痛薬、市販の薬、サプリメント、一般的に出される病院の薬との飲み合わせは、問題ありません。
■ただし、睡眠薬とアルコールだけは相性が悪く、アルコールも、睡眠薬も効果が強くなってしまいます。
 アルコールを飲んだら、睡眠薬は飲まないようにしてください。飲酒る必要がある場合は、ご相談下さい。

薬以外の方法

重度の不眠症のかた、なかなか睡眠薬をやめられない方へ
 - 薬と併用してお勧めする方法 -

睡眠の2時間ほど前に、血液の循環を良くして、身体を温めることが重要

□ 入浴
お風呂にゆっくり入る。じんわり汗をかくぐらいまで入ってください
□ ストレッチやヨガ
身体の緊張やコリをほぐし、血液循環をよくします
テレビを見たり、音楽を聴きながら、自己流でよいですから、30分続けてください
□ ウォーキング
15分程度、歩いて見ましょう。仕事から帰宅する時間を利用するのが簡単です
一駅、早く駅を降りて、歩く方法もお勧めします

仕事のこと、人間関係のこと、明日のこと、将来の不安など、余計なことを考えない

ベッドの中の工夫
電気を消して、眠ろうとすると、いろいろ頭の中に浮かんでしまい、頭がさえてしまうことはよくあります。
軽めの文庫本を読んだり、雑誌を読んだり、お気に入りの音楽を聴いたりしながら、ベッドの中で、軽く頭を使うと、次第に頭が疲れてきて、自然に寝付けるようになります。
それでも、いろいろな心配事、考え事が浮かんでくることはよくあります。枕元にメモ帳を置いておいて、いろいろと思いつくままに書き出すと、頭の中が軽くなるという「書き出し法」も有効です。